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けれどもそんなイウを抱きしめも引き離しもせずに、エメザレはその恐ろしいほどに真っ直ぐな瞳でイウを見つめているだけだった。

「エメザレ。ぼくを許してくれ。エメザレ。ぼくはお前が好きだった。憧れていたんだ、この世界の何よりも。
だから、ぼくが約束を破るはずがないんだ。あの言葉は嘘だったんだよ。ぼくは少しも黒い髪が劣っているなんて思ってないよ。
でも、ぼくはもう少しで父上に殺されてしまうところだったんだ。だか
ら、お前との約束を果たすためには、嘘をつくしかなかったんだよ。信じて!」

荒ぶる気持ちは抑えきれずに、たくさんの言葉がとめどなく口からあふれ出す。

「わかっていました」

エメザレはイウの瞳を見つめてしっかりと言った。

「じゃあ、どうして殺したの? ぼくの嘘に怒って殺したのではないなら、なぜぼくを殺す必要があるんだ?」

だんだんと黄金の夢の世界は傾いていく。その答えは実に簡単なことだった。

「それは――単に私があなたを裏切ったからですよ」

エメザレは目を背けたりしなかった。あまりにも自分を真っ直ぐに見つめ続けるエメザレが怖くなってイウはその視線から逃げた。

「……そんな。 嘘だよね? 嘘にきまってる! ぼくが嘘を言ったから怒ってるんだよね? どうして皆ぼくに嘘ばかりつくの? ジヴェーダも嘘を言った」

「ジヴェーダが……」

エメザレは、ジヴェーダがイウに何と言ったのか理解したようで、諦めの表情を浮かべた。

「それは嘘ではない」

にわかに瞳を曇らせて、辛そうに言った。


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