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その声の先には、あのエメザレの姿があった。
呆然と立ちすくんでいるエメザレ。
それでも彼の瞳は真っ直ぐで、迷いがなく清らかだ。これこそが全ての者から賞賛され崇拝されるべき英雄の姿。イウがいつまでも信じ続けたエメザレの姿だ。
昔よりも更に崇高に洗練され、元帥たる威厳を携え、恐れのない姿勢を持ってエメザレはイウのすぐ傍にいる。

「エメザレ」

イウの声は感動に震えていた。

「アスヴィット。すみませんが、二人にしてください。あと牢屋の鍵を。それから馬の支度をお願いします」

「わかりました」

アスヴィットは慣れない動作でうやうやしくお辞儀をすると、牢屋の鍵をエメザレに渡して出て行った。

「王子……」

エメザレは呟いた。信じられないといった様子で、しばらくその場所に立ち尽くして動かなかった。

「そうだ、ぼくだよ」

「生きていた……いえ、あなたは生き返ったのですか?」

やがて正気に戻ったのか、エメザレは牢屋の鍵を開けた。

「そうだよ!」

牢屋から解放されるなり、イウはエメザレに抱きついた。
どれだけこの瞬間を待ちわびたことか。何度夢見たことか。このどうしようもない気持ちを。何度。何度。


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