2/6 その声の先には、あのエメザレの姿があった。 呆然と立ちすくんでいるエメザレ。 それでも彼の瞳は真っ直ぐで、迷いがなく清らかだ。これこそが全ての者から賞賛され崇拝されるべき英雄の姿。イウがいつまでも信じ続けたエメザレの姿だ。 昔よりも更に崇高に洗練され、元帥たる威厳を携え、恐れのない姿勢を持ってエメザレはイウのすぐ傍にいる。 「エメザレ」 イウの声は感動に震えていた。 「アスヴィット。すみませんが、二人にしてください。あと牢屋の鍵を。それから馬の支度をお願いします」 「わかりました」 アスヴィットは慣れない動作でうやうやしくお辞儀をすると、牢屋の鍵をエメザレに渡して出て行った。 「王子……」 エメザレは呟いた。信じられないといった様子で、しばらくその場所に立ち尽くして動かなかった。 「そうだ、ぼくだよ」 「生きていた……いえ、あなたは生き返ったのですか?」 やがて正気に戻ったのか、エメザレは牢屋の鍵を開けた。 「そうだよ!」 牢屋から解放されるなり、イウはエメザレに抱きついた。 どれだけこの瞬間を待ちわびたことか。何度夢見たことか。このどうしようもない気持ちを。何度。何度。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |