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かつて彼は“良いひと”であったのかもしれない。そんな彼から安らぎを奪って、こうさせてしまったのは、まぎれもなく自分たちである。
そしてそれを横暴と呼んで嘲笑した白い髪を恥ずかしく思った。
オーウェがイウを憎むのは当たり前のことなのだ。それを逆恨みするのはばかばかしい。

「ごめんなさい」

朝食を届けに来たオーウェにイウは言った。

「なにが」

オーウェはいつもの、少し乱暴な声できいた。

「ぼくたちが、あなたにしたことだ」

「もういい。時代は変わったんだ」

そして、初めて彼は笑った。どこか遠い目をしてオーウェは優しい顔をした。白い髪を許したわけではないだろう。それでも、イウの言葉でほんの少しだけ彼は救われたように思う。そうとだけ言うと、オーウェは去っていった。
そしてわかった。黒い髪の国に白い髪は必要ないということを。

それを思い知った。

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