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そして手紙にこう書いた。



ゴルトバの血を持つエメザレへ

この手紙を見て、たちの悪い冗談か、あるいは何かの脅しだと思うかもしれないが、その意図はなく、これは真実であることをここに誓う。

ぼくの名はイウだ。知っての通りお前が殺したはずのクウェージアの王子だ。なぜ生きているのか、いまだにぼくにもよくわからない。
ただ、ぼくは世界の踏み入れてはならない領域に入ってしまったようなのだ。
それをいうならば、きっとお前にもぼくと近しい何かが起こったはずだ。だから、ぼくがこうして生き返ったことを、お前はそれほど抵抗なく受け入れてくれると信じている。
だが、この現象についてはこれ以上、どちらの件も検索する気はない。
検索したとて、ぼくたちが納得する回答は得られないだろうからだ。


それよりも伝えたいことは、ぼくが最後に父上に言った言葉のことだ。
もし、お前がその言動に裏切りを感じてぼくを殺したのなら、それは仕方のないことだ。ぼくは、そのことに関して、なんら怒りの類のものは感じていない。
しかし、あの言葉はぼくの意中を正しく表したものではない。
あの言葉はまったくの偽りなのだ。嘘や弁解にきこえたとしても、それだけは信じてほしい。
そして、お前に心から謝罪したい。ぼくはお前をこの世の誰よりも尊敬し私淑してきた。お前を裏切るようなことはしたくなかった。
しかし、ぼくの愚かさゆえに結果として、ひどくお前を裏切ることになってしまった。こんなことになってしまったのも、全てぼくの責任だ。

こんなぼくに、何かを言う資格はないのかもしれないが、ひとつだけ希望を言わせてほしい。どうか、ぼくに会いに来てくれ。どうしてもお前に言いたいことがある。手紙にはとても書ききれない。
お前を信じて待っている。いつまでもお前を信じ、思っていることを忘れないでほしい。

追伸
アスヴィットはいい奴だ。よければ、もっと上のほうで働かせてやってくれ。


没落した王族の生き残りイウより


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