6/10 そこにはアスヴィットと同じ歳くらいの男が立っている。 「おい、なんだそいつ。なぜ白い髪がここにいる」 安らぎを知らないかのようにいらついた表情と、どこかグセルガを思い出させる厳しい雰囲気は、とても好感の持てるものではなかった。 鋭い目の男は、イウに強い憎悪の眼差しを向けた。 「城にいたんで連れてきた。まだ子供だし、放っておくわけにいかないだろう」 イウをかばうようにしてアスヴィットは立ち上がった。 「どうする気だよ。規則だと立ち退かない白い髪は死刑だぞ」 「いや、そんなことにはならない」 男にではなく、イウの方を見てアスヴィットは優しく言った。 「俺がスミジリアンまで連れて行く。それで問題ないだろう。元帥様のことだ、例え知らせても子供の命は取らないだろうし、この忙しい時にこんなことで手間を取らせたくない」 「だが一応規則だ。知らせておいたほうがいい。黙って白い髪を逃がすのはいくらなんでも不味いだろう」 男はアスヴィットのことが気に食わないのか、声の感じは限りなく冷たい。とても淡々としているのだが責めているような印象だ。 「オーウェ。お前はいちいちうるさい奴だな。確かに臨時の法には死刑だの処刑だの殲滅だの物騒なことが書かれているが、一度だって元帥様がそんなことしたか?」 「そうだ。全くしなかった。そう定めたのになぜ元帥はそれを守らないんだ。今まで散々俺たちを虐げてきた白い髪に、そんな慈悲はいらないのに!元帥は臆病者だ!」 オーウェはなぜかイウに向かって叫んだ。気に食わなかったのは、アスヴィットではなく、白い髪とその白い髪に甘い制裁を下したエメザレのことのようだ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |