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「そうか」

よかった。
エメザレは全ての白い髪を憎んでいるわけではないのだ。エメザレはこの国を変えたかっただけなのだ。そのためにグセルガを殺さなくてはならなかった。
ぼくを殺す予定などなかった。きっとエメザレは誤解しているのだ。

あの時グセルガに言った、約束など忘れたという言葉に、裏切りを感じて傷ついた。だからエメザレは泣いたんだ。ぼくにそんなことを言われて悲しかったんだ。
ぼくが殺されたのはぼくのせいだ。エメザレは少しも悪くない。だからぼくはエメザレに謝らなければ。

「エメザレは?エメザレはどこ?どこにいるの?」

にわかにアスヴィットに詰め寄るとイウは聞いた。

「知らないよ。本部じゃないのか?」

「本部ってどこ?ぼくはエメザレに会いに行く」

「ちょっと待て。お前、置かれている立場をわかってるのか?」

アスヴィットは、今にも走り出さんばかりのイウの腕を強めに掴むとあきれた声で言った。

「白い髪はスミジリアンに追放されたんだ。ここはもう黒い髪の国なんだ。俺たちは白い髪の残党は発見次第殲滅させよと命じられている」

イウが少し驚いた顔をしたので、アスヴィットは腕を掴む力を緩め、イウの目を見つめてなだめるように微笑んだ。

「慌てるな。元帥様は殲滅なんてしない。ましてお前みたいな子供を殺すわけがない。だからと言ってこの国に住んでいいわけじゃない。それに俺の立場上お前を逃がすわけにはいかないんだ」

「でもぼくはエメザレに会いたいんだ!」

それでもイウが譲らず叫ぶと、アスヴィットはあからさまに困った顔をした。

「とりあえず、整備部隊の駐屯地に来てもらう。そこでゆっくり話をきくよ」

殺す気はなさそうだが、逃がすつもりもなさそうだ。この人のよさそうなアスヴィットに、今のところは大人しく付いていくしかないらしい。イウは仕方なくうなずいた。


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