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だが、目の前に光る糸のようなものがあることに気付いた。いや、糸ではない。これは光だ。ローソクの火が消えなければ、このわずかな光を発見することはできなかっただろう。

彼は勢いよく身体を起こすと、その光の方へと走っていった。
やはりそれは外へと続く扉のようだ。下のほんのわずかな隙間から細い光が湧き出ている。
取っ手を掴み、開けようとするが扉は動かない。鍵はかかっていないようだが。

「くそ!」

イウは渾身の力を込めて体当たりをした。呆気ないほど簡単に扉は開き、勢い余って床に転んだ。が、転んだ先にはやわらかいクッションのようなものがあった。

ずっと暗いところに居たせいだろう。周りが明るすぎて霞んで見える。目を擦りながら彼は辺りを見渡した。そこには見覚えがあった。
宮廷の納屋だ。
使われなくなったソファーやらベッドやらが、ほこりを被って置かれている。
なぜこんなこころに扉が。
出てきた場所を覗き込むと、そこには今も恐ろしい闇が広がっている。

「あ」

 彼はまた遠い日の言葉を思い出した。

「今日行った場所は、王家の墓ではない。本当の王家の墓は違う所にある。その場所は―――」

グセルガの言葉だ。思い出せるのはそこまでだが、その続きは「納屋」だったのかもしれない。確か、昔は使われていたが、黒い髪による盗掘がひどく、何十年か前にどこかに移したと。相当昔の話だが、そんなことを言われたような気がする。

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