5/7 その廊下はおかしいくらいに真っ直ぐだった。曲がり角もなく道がわかれているということもなく、ひたすらに真っ直ぐで、しかも果てが見えない。 そんなはずはない。 いつだったか、幼い日にイウは一度この廟を訪れたことがあった。確かに広かったが、入り組んでいてまるで迷路のようだったと記憶している。 物珍しさで夢中になって歩いていたら、グセルガとはぐれて大泣きしたのだ。こんな一本道ではなかった。 ここはどこなんだ。 どれだけ歩いただろうか。その果てしなさに負けて彼はついに歩くのをやめた。 ローソクは溶けてあとほんの少しの寿命しかない。 死という絶望がイウを襲い来る。 こんなところでぼくは死ぬのか。 独りで。こんなに冷たい暗闇の中で。 力なく地面に座り込むと、大声で泣き出した。 死にたくない。死にたくない。 イースの世界から帰ってきたのに。 エメザレに会いたい。 こんな時でも頭に浮かぶのはエメザレの優しい顔だった。 エメザレはどうして。どうしてぼくを殺したんだろう。 泣きながら思った。どうか死ぬ前に理由だけでも聞かせて欲しい。 「エメザレ」 呟きは響き渡った。何度も何度も繰り返されてから残響は消え、やがてローソクの火も尽きた。 全くの静寂と暗闇の中で死の存在だけが鮮明だった。 彼は死を覚悟するが如くに身体を横たえた。石の冷たさが全身に凍みるようだ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |