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どうしてぼくを殺すんだ。エメザレ。

強く思ったが、それは声にならなかった。ただ手を伸ばした。エメザレの方に。
それが精一杯だった。
エメザレはイウから間を置き、しばらく様子を見ていたが、その姿に同情でもしたのか差し出されたイウの手を握った。
そして彼は何かを言ったが、強烈な熱さと痛みがその声を消した。

違うんだ。エメザレ。

話したいことや、聞きたいことがたくさんあった。そのエメザレがここにいるのに、何も言えないことが苦しくて、何も知らずに死ぬのが悔しくて、涙がこぼれた。

あの言葉は嘘なんだ。ぼくが王になったら、ちゃんと約束を果たすつもりだったんだ。

どうしても伝えたくて、気力だけでエメザレの服を引っ張った。口を耳に近付けて、動かしてみたが、音にならなかった。
しかし、その愛しいエメザレは、自分に向かって剣を振り上げていた。

ぼくはちゃんと約束を覚えていたのに。
約束を果たそうと思っていたのに。

終わりを告げる、一振りに刹那の輝くものを見た。

大好きだったのに。
おまえのようになりたかったのに。
ぼくは大きくなったのに。
おまえの力になれると思ったのに。

エメザレ。ぼくは――――

長い歳月のなかで育った、エメザレへの全ての感情が、なにかに押し潰され破壊されて、新しいひとつのものに変わろうとしたその時、彼の胸に二度目の刃が突き刺さった。

ぼくは――――

急激に冷たくなり、ぼんやりと霞んでゆく世界のなかで、エメザレの漆黒の髪色と血に濡れた悲しそうな微笑が目に焼きついていた。深い闇の底へと意識が堕ちて、無機質な感覚が辺りを征服しようとも、その映像は鮮明だった。永遠のように。

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