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これは幻だろうか。
罪悪感のあまり幻覚を見ているのだろうか。

でもぼくには、まるでお前がすぐそばにいるように見える。今、父上の横に立って、微笑みながら剣を振りかざしているような気がする。そして今度はぼくのほうを見て、悲しそうな表情を浮かべている。

お前はぼくの見ている夢なのか? これがぼくの望んでいることなのか?

イウの視線の先には、まぎれもないエメザレの姿があった。それが現実なのか、妄想なのか彼の答えが出る前に、エメザレはグセルガに剣を振り下ろした。

瞬間、世界の時の流れは限りなく緩やかになった。ゆっくりと、グセルガの首が傾き、そして綺麗に落ちていくと、かつて頭のあった部分から赤い羽根が広げられたかのように美しい角度で鮮血がほとばしった。
それは光り輝く赤い光のように。それは狂喜すべきこと以外のなにものでもない。その時、錆びた蝶番がやっと外れて、束縛から解放されたのだから。
血煙のなかから姿を現したエメザレは、初めて宮廷に訪れたあの時のエメザレそのものだった。

恐れのない真っ直ぐな姿勢。勇気と希望に満ち溢れた瞳。何も失われてはいなかった。全てそろっていた。あの穏やかさも、あの優しさも、あの微笑みも、瞳も。
それは待ち焦がれ、憧れ、手に入れたかった、あのエメザレだった。そのエメザレが、今こちらに向かってゆっくりと近づいてくる。微笑を浮かべて。
イウはエメザレに両手を差し伸べた。とても嬉しかったから。

父上を殺してくれた! これでぼくは王になれる! 全てが救われる!
誰も死ななくていいんだ。戦争は起こらない。
ぼくは自由になったんだ。約束を果たす時が来たのだ。
長かった。辛かった。でもこれからは、ずっと一緒だ!

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