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「それで?いかがですか、あなたの考えは」

ひと段落着いたのか、ジヴェーダは話をやめてイウから手を離した。
やっと自由を手に入れたイウは、力なく椅子に座り込むと頭を抱えてうずくまった。
ジヴェーダの声など聞こえなかった。彼は襲い来るエメザレの淫靡な様の幻影と独り戦っていた。鼓動は高鳴り身体は憎いほどに熱くなっている。

気持ちが悪かった。

「もうエメザレが正義だとか言いませんよねぇ」

ジヴェーダは可笑しそうにしながら言った。

「……エメザレは正義だ」

やっと振り絞った声で、自分に言い聞かせるように呟いた。

「おやまぁ、強情なんですね」

「お前はなんて邪悪なんだ!」

ジヴェーダの呆れ返った声に腹を立てて、イウはあらゆる憎しみを込めて叫んだ。

「邪悪?私が邪悪ですって?私は拷問師です。これが仕事なだけですよ。
灰色の髪というのは実に不便で待遇が悪くて、白い髪にも黒い髪にも蔑まれて、つける職業なんて本当に少数で、ちょっといい物を食べようと思ったら拷問師になるくらいしかないんです。
私が好き好んで灰色髪に生まれてきたのだと思います? 憧れて拷問師になったとでも思っているのですか?
私はあなたの父が築き上げた、この国の不条理に苦しむ被害者の一人に過ぎない。
それでもあなたは私を邪悪だと言うのですか?
王子は最初におっしゃいました、髪の色も職業も軽蔑しないと、同性との行為だけ軽蔑すると。それなら私もエメザレも変わらないはずだ!」

ジヴェーダは声を張り上げた。それは今までの、他人をなんとも思わない飄々しさからは、想像できないほどに真剣な怒りが含まれているようだった。

「まぁいいですよ。気が変わらないなら」

イウが少し驚いたようにジヴェーダの顔を見ると、彼は先ほどの感情的な言葉を恥じるように妙な笑みを浮かべ、また小ばかにしたような物言いで続けた。

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