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「なぜ、そんなことを……」

汚らわしいというよりも、まずその事実が受け止められない。

「なぜって、明確な理由なんてありませんよ。王子。気が向いたからです」

顔色一つ変えず、ジヴェーダはそれを思い出して楽しんでいるかのようだった。
気が向いたからという理由で犠牲になったエメザレは、その時どんな気持ちだっただろう。どんなにつらかっただろうか。自分には想像もつかないが、それが精神的にも肉体的にも大きな苦痛であったことくらいは理解できる。

「貴様! そんなくだらない劣情のためにエメザレを玩弄したというのか! 汚らわしい!」

イウは身を乗り出して、向かいに座るジヴェーダの首を掴み言った。
テーブルに置かれたティーカップは小さな音を立てて揺れ、わずかに中身をこぼして白いクロスに染みを作った。

「おやまぁ、ずいぶんと難しい言葉をご存知ですね。あれは、あなたにも見せて差し上げたかったですよ。おしかったですね。エメザレの部屋を訪れたとき、あなたは変な勇気など出さずに黙って聞き耳でもたてていればよかったんですよ。行為に対するエメザレの反応を観覧していれば、彼を正義だとか憧れだとか、ばかなことを言い出さずに、平穏な生涯を送れたでしょうに」

イウの怒りにも全く動じる気配はなく、彼が感情的になるとジヴェーダはさらに強く冷笑を浮かべて、わざとらしく彼の気に障るような単語を並べた。

「黙れ! ジヴェーダ」

イウはジヴェーダの首を力一杯に絞めたが、反対にその腕を掴まれた。

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