5/6 「もういい」 「あなたはエメザレが怖かった。認めたらどうですか?」 イウは激しく責めるようにきいた。 「愛しい息子よ。一つ教えておいてやろう。お前に王位をわたす気はない。お前に、わたしの国はやらぬ」 「いちいち愛しいと付けるのはやめていただけませんか。ぼくを憎んでいるくせに」 「お前がどう思おうと関係ない。息子よ、わたしは再三にわたり、わたしの考えを受け入れてほしいと願ってきた。しかし、お前はどんなにわたしが説得しようとも、きく耳を貸さなかった。これは大変に残念なことだが、しかたあるまい」 「なんだと言うのですか」 「三日後までに、お前が考えを変えなければ、お前を処刑台に送る」 イウは一瞬言葉を失った。 「……処刑?ぼくを?」 「わたしの息子はお前だけだ。しかし、わたしに従順でないお前に、わたしの国を譲るわけにはいかん。例え、わたしの血を引いていなくとも、わたしの死後もわたしの望んだ方向に、この国を導いてくれる誰かに王位を譲りたいと思っている」 世界が収縮していくのを感じた。約束を果たせなくなることを恐れた。急に押し黙り、イウは父の顔を見つめた。 「心配しなくとも、お前はいつまでもわたしの愛しい息子。三日後までに、どんな手を使ってもお前の危険な思想を正し、その悪意に満ちた妄想から救い出してやろう」 無表情の下にある怯えを見透かして、グセルガは満足そうに笑みを浮かべた。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |