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「それは、あなたの抱いている妄想に過ぎない。髪の色なんて関係ない。むしろ心の美しさにおいては、あなたのほうが劣っている」

「わたしを侮辱する気か!」

グセルガは立ち上がり、近付いてきたかと思うと、いきなりイウの目の前にあった皿を思い切り投げつけた。
金属でできた固い皿は、鈍い音を立ててイウの額に当たった。
しばらくしてその場所から血が流れ出てきたが、イウは血を拭いもせずにグセルガを睨み付けた。

「そうやって、自分の意思を押しつけては、拒否する者を殺すのですね」

グセルガは押し黙って、顔をそむけた。傷心ではなく怒りのために。

「なぜエメザレにあんなにひどい仕打ちをしたのですか」

「その名を口にするなと言ったはずだ」

イウの顎を片手で引っつかんで言った。

「それを承諾したつもりはありません」

「なぜお前はあの男に固執をする。一体エメザレはお前に何をしてくれたと言うのだ?」

「ぼくに正しさを教えてくれました。この城の中で彼だけがぼくの理解者だった。エメザレはあなたに従順だったはず。あなたに感謝し、尊敬と忠誠を持って接していたはず。あなたの知る中で、最も有能で信頼の置ける人物だったはず。それなのに、なのにあなたは彼に屈辱を与えた。片目を奪った。無能者と呼ばせた。あなたの身勝手な下らない考えのために!」

抑えきれないエメザレへの憧れがほとばしった。そして、過ぎ去った出来事を思い出しては、エメザレ以外の全てのものへ怒りを覚える。
正しいのはエメザレだけだ。彼はそれ以外に正しいものを知らない。もしそれを正しくないというのならば、それが間違いなのであって、それは彼の確信を揺るがす理由にはならない。


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