4/6 「それは、あなたの抱いている妄想に過ぎない。髪の色なんて関係ない。むしろ心の美しさにおいては、あなたのほうが劣っている」 「わたしを侮辱する気か!」 グセルガは立ち上がり、近付いてきたかと思うと、いきなりイウの目の前にあった皿を思い切り投げつけた。 金属でできた固い皿は、鈍い音を立ててイウの額に当たった。 しばらくしてその場所から血が流れ出てきたが、イウは血を拭いもせずにグセルガを睨み付けた。 「そうやって、自分の意思を押しつけては、拒否する者を殺すのですね」 グセルガは押し黙って、顔をそむけた。傷心ではなく怒りのために。 「なぜエメザレにあんなにひどい仕打ちをしたのですか」 「その名を口にするなと言ったはずだ」 イウの顎を片手で引っつかんで言った。 「それを承諾したつもりはありません」 「なぜお前はあの男に固執をする。一体エメザレはお前に何をしてくれたと言うのだ?」 「ぼくに正しさを教えてくれました。この城の中で彼だけがぼくの理解者だった。エメザレはあなたに従順だったはず。あなたに感謝し、尊敬と忠誠を持って接していたはず。あなたの知る中で、最も有能で信頼の置ける人物だったはず。それなのに、なのにあなたは彼に屈辱を与えた。片目を奪った。無能者と呼ばせた。あなたの身勝手な下らない考えのために!」 抑えきれないエメザレへの憧れがほとばしった。そして、過ぎ去った出来事を思い出しては、エメザレ以外の全てのものへ怒りを覚える。 正しいのはエメザレだけだ。彼はそれ以外に正しいものを知らない。もしそれを正しくないというのならば、それが間違いなのであって、それは彼の確信を揺るがす理由にはならない。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |