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「それはできぬ。お前の考えはこれまでの国家体制を維持していくうえで非常に危険だ」

「ぼくは今の国家体制を維持する気は毛頭ありません。ぼくは、ただこの国の繁栄を願っているだけです。あなたはこの国を救う術を知っているのに、救おうとしない。ただ苦しめて自分で納得しているだけ。あなたがいるからぼくは何もできないが、あなたが許してさえくれれば、ぼくは何でもできるのです」

「哀れなイウよ。おまえは狂っている」

グセルガはそう吐き捨てた。その瞳には歪められた期待と希望ではなく、イウへの嫌悪と否定が映っていた。

「ぼくは狂ってなどいません」

「目を覚ませ。我等、白い髪は常に全てにおいて優越していた。常に特別な存在だった。この世界で最も有能であり、最も美しく、神エルドに必要とされている。黒い髪とは価値が違うのだよ。白い髪に誇りを持て。彼らを支配することは、世界ができたときから既に決まっていたことだ。低俗な彼らに同情する必要はない」

太古の昔から続く、白い髪の強い選民思想。
エルドという神に仕え、旧世界の大戦でエルド派として戦った、種祖エクアフの子孫とされている白い髪。
黒い髪は種祖エクアフの右腕であったシャイヤの子孫とされているため、根拠のない優劣が、一万年の時を経てもごく自然なことのように残っている。

そして、遠い昔に存在した白い髪の超大国デネレアは、世界の三分の一を支配していた時代もあった。
その栄光と繁栄の余韻は、エクアフという種族全体が廃れ、衰退の一途を辿っているこの時世においてもなお続いているのだ。
世界の端にある小国が、この不安定な世界情勢を前に、内部で髪の色がどうのと言っている余裕は本来ならばないのである。


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