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しかし、その願いはエメザレの一言によって崩れ去った。
明らかに声の調子が変わった。まるでグセルガに対して喧嘩を売るような声の感じだ。
グセルガを睨み付けるエメザレの目には、微笑と優しさではなく、これまでの仕打ちへの恨みと憎悪が込められていた。

なぜこんなことをするのか、イウは不思議に思った。いつもの穏やかな声で言えば、グセルガの怒りをかうことはなかったかもしれないのに。
苦痛や憎しみを我慢することなど、エメザレには簡単にできたはずなのに。
疑問を投げかけるようにエメザレを見ると、彼はイウの方を見て優しげな表情をした。

「口答えをするな! 劣等した黒い髪め!」

もはや、エメザレが言ったことなど聞こえていない。グセルガはエメザレのそばまで行くと、いきなりにひざまずいたままのエメザレの頭を蹴りあげた。
エメザレは体勢を崩して倒れ、床でさらに頭を強打したが、グセルガはかまわずに何度も彼の頭を踏み付けた。

「なぜ、こんなもののために! わたしが!」

声は裏返り、グセルガは狂ったかのように何度も何度もエメザレを蹴りつづけた。それでもエメザレは抵抗するわけでもなく、悲鳴を上げるでもなく、全てを受け入れていた。
しばらくして、疲れたのかグゼルガはエメザレを蹴るのをやめた。しかし、グゼルガの怒りがおさまったわけではなさそうだった。
これ以上見ていたくなくて、イウは両手で頭を抱え、その場にうずくまった。


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