4/8 「お呼びでございますか。陛下」 エメザレは音もなく現れると、グセルガの前でひざまずき頭を下げた。少し遅れてジヴェーダも現れたが、王の様子をうかがって隅のほうに立った。 「お前に一つ言っておく。我等より劣った、黒い髪のお前がこの城で働けるのは、わたしが慈悲をかけているからだ。 わたしの思いやりと優しさ以外に、お前を救えるものはない。お前はそれをわかっているのかね」 静かに始まったグセルガの言葉はいつもより余計に重く聞こえた。 グセルガの瞳の中では狂気に似たなにかが輝きを放っていた。だからといって、イウに何ができるわけでもない。この場から逃げたい衝動に駆られたが、それすらもかなわない。 「はい。わかっております」 「わたしに感謝しているかね」 さらに静かな声でグセルガはきいた。 「はい。いつも感謝しております」 「そうか。わたしに感謝しているのだな。ならば、なぜ我が息子に余計なことを教えた! わたしが大事に大事に育ててきた息子に! なぜいらぬ事を吹き込んだ! なぜわたしは息子にまで裏切られないとならない? お前だ。お前のせいだ!」 金切り声で叫んだ。グセルガを取り巻く不穏な空気は激烈な怒りとなって、殺意すら漂わせていた。 「違う! 父上、ぼくの話をきいてください!」 体を振るわせながらも、腹から声を絞り出した。エメザレが殺されてしまいそうで、ただ恐ろしかった。城の中で、自分以外に彼の味方をする者は、一人もいない。少しでもエメザレの力になりたいと、イウは必死に悲鳴を上げた。 「私はイウ王子に、余計なことを教えた覚えはありません」 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |