7/9 「なぜって……心配で……」 いざエメザレを前にすると話すのが恥ずかしくなって、イウはエメザレから目をそらせた。 「感謝致します。王子。私のような黒い髪に情けをかけて頂いて……」 エメザレは床に頭を摩り付けるようにして深く頭を下げた。 「やめて!顔をあげてよ!」 エメザレに恐れられているような気がして嫌だった。つい叫ぶと、エメザレは慌てて顔を上げ不思議そうにイウの顔を見た。 「ぼくは、黒い髪が劣等してると思ってない!ぼくは黒髪が醜いと思わないし、お前を卑しいとも思わない!ぼくはお前のことが心配で来ただけだ。だから……ぼくは、ぼくだけは敵じゃないんだ」 しばらくエメザレは座ったままイウを見上げていたが、やがて静かな黒い瞳が鮮やかな感情を抱いて輝いた。 「良かった」 エメザレは呟いた。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |