5/9 「やめろ!」 気付いた時には既に、イウは力一杯に叫びながらその部屋に飛び込んでいた。 どうやらジヴェーダのこぶしはまだ、エメザレの顔に到着していない。 こんなことができたのか。 イウは自分のしたことに驚いた。 エメザレとジヴェーダは、突然のイウの登場に絶句して固まった。 「王子……なぜ、ここに?」 この状況に気まずさを感じたのか、ジヴェーダはすぐにエメザレを解放した。その問いを無視してイウはエメザレに駆け寄り、彼を抱き起こしながら、ジヴェーダを睨み付けて言った。 「いい加減にしろ! 彼が何をしたっていうんだ。これ以上エメザレを傷つけたら、ぼくが許さないからな! さがれ! 部屋から出て行け」 ジヴェーダはその奸悪のあふれ出す目を細めて、低い位置にいる二人を見ると、なにか言いたげな顔をした。 「なんだ」 「いいえ。失礼いたしました」 納得いかないといった声で、ややぶっきらぼうに言うと、エメザレに一瞥をくれて部屋から出ていった。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |