4/9


「俺の言うことをきくのは、そんなに難しいことか? ただこの城から出ていくだけだ。それくらいできるだろう」

しかし、エメザレは答えない。

「何とか言えよ!」

エメザレの顔を壁からもぎ放すと、今度は思い切り突き飛ばした。
彼は倒れなかったが、ジヴェーダはそれが気に食わなかったのか、エメザレの胸ぐらを掴んで床になぎ倒した。
かなり派手に転倒したので、相当な衝撃を受けたはずだが、エメザレは呻き声ひとつたてず、起きあがろうともしなかった。

「声ぐらい出せよ。つまらない奴だな。この口は飾り物か」

床に倒れたままのエメザレの顔をのぞくようにしてしゃがみ込んだジヴェーダは、持っていた鞭の柄をエメザレの口に無理やりねじ込んだ。
たまらず、咳き込むエメザレの姿を見て、ジヴェーダは高笑いをした。

「あぁ、無様だ。これが黒い髪の最も有能な男の姿か。実に滑稽だ。誇りも威厳もあったもんじゃないな」

「私は出て行きません。私はあなたの功績にも加担しませんよ」

さすがに腹が立ったのか、エメザレがやっと口を開いたが、出てきたのはそんな言葉だった。
イウは咄嗟に口に手を当てた。自分が言ったかのような気がしたのだ。

そんなことを言ったら殺されてしまうよ!

イウの心の声はエメザレに叫んでいた。

「なんだと、生意気な!」
言うが早いか、ジヴェーダは体を起こしかけていたエメザレをもう一度床に突き倒すと、馬乗りになった。

「くそ野郎!」

ものすごい形相でエメザレを睨みつけ、こぶしを顔にめがけて振り下ろした。

- 15 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP