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そして三ヶ月、イウはエメザレを見続けて気がついた。

エメザレこそが仲間であると。

エメザレにも居場所はないのだ。だから、かろうじて手に入れたこの狭い居場所の中に留まっていたくて、だから、どんなことをされても我慢して一生懸命その場に這いつくばっている。
それは、はたから見れば醜態でしかないが、それを改善する手段を打てば、確実にその粗悪な居場所すら失ってしまう。その輪廻からは抜け出せないのだ。
だから気付いた瞬間に、エメザレのことが愛しくてたまらなくなった。

きっと自分の気持ちをわかってくれると思った。
王子である自分が、白い髪と黒い髪の平等を望んでいることを伝えたら、エメザレは喜んでくれるのではないかと思った。
もしかしたら愛してくれるかもしれないと。
イウはそんな希望を抱いた。

イウの希望はどうしようもなく強くなって、何度も彼に夢を見させた。とても幸せな夢を。

エメザレと一度話しをしてみたと願ったが、それが王の耳に入りでもしたら一生信用されることはないだろう。二度と口をきいてくれないかもしれない。ずっと無視をされるかもしれない。
それはとても恐ろしいことだ。

それでも、イウはエメザレと話しがしたかった。どうしても。

しかしエメザレと二人きりで話しをするのは、なかなか難しいことだった。
エメザレの傍らには一日中ジヴェーダ張り付いているし、イウの方にも何人かの目付役が常にいたからだ。

夜に部屋を抜け出すしかない。

些細なことだが、いけない、と言われたことを一度もしたことのないイウにとって、これは大変な決心だった。
そしてエメザレが宮廷に来てから三ヵ月半という月日が流れて、ようやくイウは行動に移した。

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