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「さぁ。ぼくにもよくわからなかった」

「そうですか。あとひとつ、エメザレの空間転移は本当ですか」

 この質問に答えるか、イウは少し悩んだ。それを肯定するということは、もはや自分がクウェージアの王子であることを認めるようなものだ。

 隠したい、という気持ちはあるが、高峰に隠しても無駄だろうと思った。証拠はないのかもしれない。だが高峰は確実にイウの正体に気付いている。しかし先ほども述べたように、高峰が知りたいのはゴルトバのことだ。善悪や正誤を決めたいのではない。世界の摂理を知りたい。それだけなのだ。

 イウはゆっくりと頷いた。

「ならば、あなたは生き返ったのですね。エメザレに手紙を送ったのはあなたですか。どうやって? なにが起こったのですか」

 動揺しているのか、高峰はわずかに早口で言った。

「わからない。自分でも、なにが起こっているのか、なんなのかわからない。ぼくは死んだ。エメザレに殺された。それなのにぼくは、イースの個人世界というところで目を覚ました。イースの代理と名乗る顔だけのやつが、ぼくの遺伝子の修復するとかわけのわからないことを言って、生き返らせたんだ。

でもイースの個人世界は一万年の間、開かれたことがなく、ゴルトバが言うには、この世界での『復活』は不可能らしい。そしてゴルトバはイース代理を狂っているとも言っていた。だけど彼らの言うことは、ぼくにはほとんど理解できなかった。でも思うんだ。ぼくはもしかしたら、世界において規定外の体験をしてしまったのかもしれないと。高峰はなにを知っているの? 新造生物ゴルトバがなんなのか、イース代理はなんのためにいるのか知ってる?」

「イース代理のことについてはわかりません。個人世界という単語も聞いた事がありません。ゴルトバについても正確なことはわかりません。全て仮定です。ですが、空間転移を可能にする能力はゴルトバは持っていないはずでした。

これは我々の考えではなく、私の考えですが、新造生物は他にもいるのではないでしょうか。新造生物ゴルトバが身体を修復し、違う新造生物が空間転移させた。知ることを我々ができないだけで、新造生物が世界のどこかに多数存在しているのかも――いえ、いるでしょう。おそらくイース代理も新造生物かそれに近い存在と思われます。

ただ我々の力では見つけ出すのができない。新造生物などは一部の法則を変える事が許される存在と仮定されています。世界法則に支配的な勢力の一部なのでしょう」


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