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 そして高峰は突然向きを変え、セウ=ハルフ達に背を向けた。イウも肩を掴かまれ、同じ向きに変えさせられた。

「セウ=ハルフさんは読唇できます。気をつけて話してください」

 充分に離れた位置にいるのだが、聞かれることを警戒してか、高峰はイウにぴったり張り付くように身を寄せて、耳元で囁いた。

「読唇?」

 とイウは聞いたが、高峰は質問には答えず話しだした。

「もしかして、ゴルトバはエメザレの身体を修復したと言っていましたか?」

「力を貸したとだけ言っていたけど、修復したという意味だと思う。ぼくは四年前、宮廷を追われるエメザレを見たんだ。小さいときの記憶ではあるけど、はっきりと覚えている。あの身体ではもう歩くことはできなかった。死んでいてもおかしくなかったくらいだ。ゴルトバの能力を借りなければ、元の身体に戻ることはできないと思う」

 イウも後ろを気にしながら、高峰の耳のできるだけ近くでそう言った。

「なるほど。ではエメザレが死んでいるか、そして殺したのは誰か、という質問はもうしません。真実は直にわかるだろうからです。動機をお聞きしたいところですが、それは我々の研究分野とは関係ないですから、無視しておきます。

実は我々は、ラルレの空中庭園に出てくる新造生物ゴルトバがエメザレの身体を修復したと、可能性を考えました。我々と言っても本国ではありません。学術団の六人が考えたことですが、正しいかもしれません。ゴルトバはどのようなことを言っていましたか。ゴルトバの目的はなんですか」

「ぼくはエメザレの近くで声を聞いた。形のない声だけの存在で、頭の中に直接響いてくるような感じだった。エメザレがなぜ、どうやってゴルトバと出会ったのかは知らないけど、ぼくが話したのはゴルトバではなく、ゴルトバを母さんと呼ぶ『不完全なエメザレ』だった。目的がなんなのかは聞かなかったからわからない。ただ、母さん――つまりゴルトバは遺伝子情報と住基盤を集めていると、そう言ってた。そしてすぐに、母さんのところへ行くと言って声は聞こえなくなった」

「住基盤とはなんですか。初めて聞きました」

 高峰は初めて表情らしい表情を見せて悩やみ、顔をしかめた。


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