4/6


「そっか。オルギア探査は仕事なんだね。じゃあぼくはモートが笑うところが見れないのか、残念」
「いつか僕たちの国に来れば見れますよ。モートの笑顔」

 と言って剽軽は軽く二度頷いた。その声は表情からは信じられないくらいに活き活きとしている。

「モートの国は国交を絶ってるって聞いたけど」
「うん、そうですけど、国交はね。友好の証さえあれば、個人だったら大丈夫です」
「友好の証?」

 モートはエクアフと同じように他種族を拒絶しているのだと思っていたが、エクアフの排他文化とは根本的に違うようだ。エクアフは個人も他種族も他国も拒絶するが、モートはそうではない。それどころか、こうして遠方を訪れ他種族や他国を知ろうとしているようにも思える。

 彼らの口から友好という言葉が出たのは少々意外だったが、なんとなくモートの価値観がわかってきたような気がした。

「高峰に言えばくれますよ。黒いカードなんですけど、後で頼んであげます。セウ=ハルフさんとデミングさんにも前にあげました。そのカードがあれば、モートの国に入ることができますよ。でも二度と外の世界には帰れませんけどね。だから来るひとはほとんどいません」

 おそらく剽軽は笑いたかったのだろう。剽軽は何度も頷いた。

「二度と外に出られないなら行きたくないな。よほど暮らしやすければいいけど」
「そうですよね、普通。でもきっと僕たちの住んでる仙窟区を見たら驚くと思います。世界最高の技術が結集したモート三国の最大都市なんです。それに仙窟区には――」
「剽軽。お喋り。ひょうきんはそこまで」

 ずっと無口を決め込んでいた幻影が静かな一言を放つと、剽軽はすぐに口を閉じた。そういえばモートはエクアフ語を発音するのが苦手なだけで、意味は理解できると言っていた。文法的にも未熟である幻影や他のモートがどこまで剽軽とイウの会話を聞き取れたかは知らないが、少なくとも高峰は全て理解できただろう。

「幻影は高峰より厳しいな。僕だって分別なく話しているわけじゃないのに」

 と剽軽は幻影にエクアフ語で言ったが、幻影の返しはモート語で、それ以降は剽軽もモート語を使ったので会話の意味はわからなくなった。ただ雰囲気からすると剽軽は幻影に怒られたらしく、剽軽はおとなしくなってしまった。


- 129 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む

モドルTOP