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「よかろう。ではお前の監視をする者を紹介しよう」

「ジヴェーダを呼べ」

「ジヴェーダ…!」

イウは驚いて声をあげた。その名はあまりにもこの国では有名だったからだ。
ジヴェーダはこの国で最も恐れられている拷問師である。
純潔な白い髪ではなく二代前の片方が黒い髪であったが、ひとを従わせる術を知り尽くしており、その残酷無慈悲な振る舞いは忌み嫌われると同時に、敵に向けられるには極めて都合のよいものであった。
その劣悪なる才能のために彼は宮廷に入ることを許されたのだ。

しかし、存在が邪悪の象徴であると揶揄されるジヴェーダは、王子の前に姿を見せることを硬く禁じられていた。
まるで化け物のように扱われ、影で悪口を叩くものは多いが彼を前にしては誰もが口をつぐみ、関わりを持たないよう気をつけるのが常だと聞いている。

グセルガは黒い髪の監視役にあろうことか拷問師をつけるつもりでいるのだ。
そうとわかると、黒い髪への同情がよりいっそう深まった。

「どうかしたのか、我が息子よ」

王の口は笑っていた。

「い…え、何でもありません…」

なんと酷いことを!

出かかった声を無理に押し込めた。
哀れなエメザレに目をやると視線が合った。彼は微笑んだが、イウはそれを無視してうつむいた。

「お呼びでございますか。陛下」

王の間に現れたジヴェーダは噂通りの粗暴をにおわす顔立ちだった。
白い髪には珍しいくらいの長身で、がたいもよくがっしりとしていて、軍人にしては華奢なエメザレより確実に一回りは大きかった。
無作法極まりない無造作な髪には潤いがなく、だらしのない制服の着こなしでわかるように、彼が褒められた人物でないのは確かだった。

「お前の監視と面倒は、そのジヴェーダがみる。わからないことは彼にききたまえ」

せせら笑いを浮かべながらグセルガは冷たく言った。

「はい。陛下」

「では、さっそく床を拭く仕事に取り掛かるといい。ジヴェーダ、頼んだぞ」

その言葉にジヴェーダは意味ありげにうなずいた。

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