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「わかりました。いいでしょう」

 優しくはあるが高揚のない、淡々とした言い方だったので、喜びを大声で表現することははばかられたが、イウの内心は安堵と歓喜でざわめいていた。

「おー、良かったね」

 セウーハルフはぽんとイウの肩を叩いて笑った。

「言うのが遅くなりました。名前です。私は高峰といいます」

 隊長らしきモートの男は馬を降り、イウに右手を差し出して、エクアフ語で意味のある単語を組み合わせた名を名乗った。

 高峰の顔は自分より二倍近く長く、そのぶん額も広く、落ち着いた色味の金の直毛は、腰の辺りまである長さだった。長髪の合間からは、耳にぶら下がったたくさんの銀色のピアスが見えた。肌の色は闇色という表現が一番ふさわしく、それでいて瞳の色は白い髪のエクアフと同じように、色素がほとんどない白っぽい色だったが、角度を変えるとまるで猫の瞳のように瞳全体が光って見える。大人であることはわかったが、高峰の年齢は全くわからない。二十代だと言われても五十代だと言われても、そうかもしれないとしか思えない。美的感覚が違うので断言はできないが、細い鼻筋と切れ長の凛々しげな目元から、それなりの顔立ちをしているように見える。

「なんと言うのですか? 名前は、あなた」

 表情は全く変わらない。怒っているわけでもないし、拒もうとしているわけでもないのだろうが、とにかく顔の筋肉が静かで取っ付きにくい。

「イウ」

 イウは差し出されていた高峰の右手を軽く握り返して言った。

「ではイウさん。よろしくお願いします」

 高峰が礼儀正しく言ったので、イウは笑いかけてみたが、高峰はにこりともせずにただ黙って軽く頭を下げただけだった。


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