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「この子は!」

 と勢いよくデミングが叫ぶように言った。モートたちは一斉にデミングを、その表情があまり感じられない顔で見た。デミングは一瞬たじろいだが、負けんとばかりに声を張り上げて続けた。

「この子は、考古学に興味があり、どうしてもどうしてもどうしてもオルギアの遺跡に行きたいそうなのです。クウェージアの子で、本当はヴルドンへ行かなくてはならないところを、こっそり逃げてきてしまったくらいです。悪さなんてしませんし、あなた方の邪魔もしません。なんとか連れて行ってやりたいのです」
「なるほど。そうですか」

 驚くほどあっさりとした口調でそう言うと、モートたちは自分達の言葉でなにやら相談し始めた。音を文字に起こせないくらいに耳慣れない言葉で、しかも音域が平坦であり、そもそも母音が違いすぎてお互いにお互いの言語を完璧に習得するのは難しいように感じられた。

「こいつは本当にオルギアに行きたいみたいなんだ。俺からも頼むよ。一緒に連れて行ってくれないか」

 セウ=ハルフが約束どおりモートの背中に一応頼んでくれた。先日の一件でセウ=ハルフはしばらく気を落としていたが、イウが積極的に話しかけるようにしたところ、どうやらセウ=ハルフの心の傷は治ったらしかった。

「クウェージアの子だと言いましたね。先ほど。そうですね」

 会議が終り、隊長らしき先ほどの男がデミングに向き直ってそう聞いた。

「そうです! クウェージアの子で家柄はたぶん立派な子です! 分別のある子です! 全く!」


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