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 玄関を開けるとセウ=ハルフが言ったとおり、彼らはもうそこにいた。二列縦隊のまま微動だにせず、三人を待ち受けている。六人とも馬にまたがったままだ。視線が上から来るせいなのか威圧感がある。デミルマートが愛想はよくないと言っていたが、まったくその通りだと思った。

 それよりも、イウはモートたちの細長さに驚いた。貧弱な、と揶揄されるエクアフ種族に負けないほど彼らは細く――というか長いのだ。輪郭といい手といい足といい指といい、身体中のパーツを全て引き伸ばしたような、目の錯覚を疑ってしまうほどにシルエットが細長い。彼らがイウと同じヴェーネン(人類)というのが信じがたい。根本的な骨格の違いを持っていた。

「あれ、待った?」

 セウ=ハルフは空気を読めないのか読まないのか、厳しい顔のモートたちに頓狂とも言っていい声で聞いた。

「いや、来たのは今です」

 最前列の左にいるモートの男が答えた。エクアフ語だったが少し訛っている。「来た」というところがイウには聞き取りづらかった。声はそれほど恐くはない。言葉使いは礼儀正しいし、むしろ優しげだった。最前列の左の男はなんとなく他を従えているように感じる。おそらく彼がトップなのだろう。

 モートの六人はほとんど同じような、見たこともないテカテカと光る光沢のある素材の黒く長いコートを着て、コートの上に黒いベルトを二本巻き、そこに小型のナイフや小物入れや、用途のわからない細く短い棒などを括りつけていて、セウ=ハルフやデミングの探索に適した格好とは真反対に、六人全てが常識では考えられないくらいに高いヒールの、ベルトなのかバンドなのか、これまたよくわからない紐がこれでもかと巻かれた、膝よりも長いブーツを履いている。何人かは額より少し上に、台形状の浅い筒にガラスを乗せたようなものが二つ連なっている奇妙なものをつけていた。下にずらせば丁度、目を覆う形になるので、モート式の眼鏡なのだろうか、とイウは思った。

「そちらは? お約束では二人のはずですが、案内は」

 怒ってはいない。純粋に疑問に思っている、という印象だ。


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