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 二人はオルギア探索にはぴったりの厚めの服を着ていた。クウェージア同様スミジリアンも夏であっても気温は高くならない。か弱い太陽が当たっている日中は暖かいが、朝晩は夏でも寒いのだ。
 二人ともレデルセンという皮のズボンと靴を組み合わせた脚依を履き、灰色の薄めで短い丈のチュニックを上に着て、羊毛の分厚い真紅のコートを着ていた。エクアフの文化では赤はあまりいい色ではなかった。正確な理由はわからないが、シクアス種族が太陽を赤で表現しているからだと言われている。コートの赤は意図的で、濃霧でも目立つように、ということなのだろう。

 自分はといえば少々汚れてきた白い服を着ている。これしか持っていないので仕方ないのだが、濃霧の中に紛れ込んだら容赦なく一体化されてしまう。

「もう来たみたいだ。窓から見えたよ」
「あいかわらず奴らは時間に正確だな」

 セウ=ハルフは大きな荷物を玄関にどすんと投げるように置いた。

「そりゃあモート種族だもの。正確さ」

 デミングのクマは相変わらず治っていないが、早起きのせいなのか今日は一層クマが濃いような気がした。

「体内時計でも内蔵されてんのか。奴らには」
「彼らの国には原子時計というとんでもなく正確な時計があるらしい」
「ゲンシ時計? ゲンシって何だ?」
「知らん。説明されたがちんぷんかんぷんだったよ。哲学的には分割不可能な存在で物事を構成する最小単位だそうだが、物質としては元素の最小単位だそうだ」
「ゲンソ? なんだそりゃ」
「だから、知らんて。化学物質を構成する基礎的な要素を指す概念で、原子は物質を構成する具体的要素なのに対して、元素は性質を包括する抽象的概念と言っていたかな」
「え、化学物質? ゲンシ? 性質を包括? 構成するゲンソがなんだって?」
「もういいよ。その頭はしばらく休めておいた方がいい」


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