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 しばらく外を眺めているとデミルマートが屋敷に来るのが見えた。買い物に行っていたのだろう。たくさんの食料品が入った大きな籠を抱えていた。デミルマートは窓から頭を出していたイウにすぐ気付き、籠をなんとか片手で支えてもう片方の手を振った。

「おはようございます、お坊ちゃん。起きたんですね。今朝食をお持ちしますから、ちょっと待っててくださいな」

 と言って、屋敷に入っていくと、本当にすぐに朝食を持って部屋に現れた。デミルマートはこれから洗濯物を干すのか、朝食が乗ったトレーを持ちながら、器用にも小脇に洗濯籠を抱えて微笑んでいた。

「おはよう、デミルマートさん。なにからなにまでありがとう」
「いいえ、作る量が一人増えたからって、どういうことでもありませんよ。五日間泊ると聞いてあたしは嬉しく思っているのよ。ここだけの話、あの二人の面子に飽き飽きしていたところですから」

 デミルマートは茶目っ気たっぷりに毒づきながら、大きくはないテーブルに料理を並べて椅子までひいてくれた。

「お坊ちゃん。ちょっとすいませんよ」

 にわかにデミルマートはイウの前を通り過ぎると、なぜか窓を閉めた。

「どうかしたの?」
「お洋服が乾きましたよ」

 デミルマートはイウの質問には答えず、抱えてきた洗濯籠の下の方から、隠すようにして布に包んである白い服を取り出し、しのび声で言った。

「それで……ポケットからこんなものが出てきたの」

 差し出された白い服の上には、見たことのない銀の指輪が乗っていた。指輪には折りたたまれた紙切れが結ばれている。


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