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「まぁ俺は構わないが、モートの奴らがどう言うかな。どうもモートはオルギア研究を極秘裏におこなっているらしいんだ」

「僕がなんとか説得するよ。モートは知識を求める者には敬意を払うものだし、熱意を伝えれば了承してくれるはずだ。それにいくらカルテニがオルギアに一番近い村だと言っても、遠いことには変わりない。霧は濃いし、道だってあってないようなものだし、もしかしたらあのダルテスが出るかもしれないし、一人で行かせるなんて危険すぎる。せっかくこの子はここまで来たんだ。僕はこの子をオルギアに連れてってやりたい」

 デミングは右手で拳を握り、左手でイウの肩をがしっと掴んで引き寄せ、セル=ハルフに言った。

「オルギアってそんなにいいとこかねぇ」とぼやいてから「仕方ない。一応、俺も頼んでやるよ。一応だけど」と多少、歯切れが悪そうな表情で笑った。

「二人ともありがとう。とても助かったよ。本当にありがとう」

 彼は恥かしそうに笑うと、肩に置かれたデミングの手を二度叩き、そして左に座るセウ=ハルフに頭を下げた。

「ところでさっきは、どうしてアシディアの話から急にゴルトバの話になったんだ? アシディアとゴルトバは何か関連があるのか? 第一にお前はどうして『新造生物ゴルトバ』の名前を知っていた? お前はなにかを知っているのか?」

 重い雰囲気は感じさせない軽い口調で、セウ=ハルフは聞いてきた。故意か不故意かわからないが、どうもこのセウ=ハルフという男は鋭いところをよく突いてくる。この調子ではイウの話のほころびが見つかるまでに、そう時間はかからないだろう。
五日間、もつだろうか。

「……ぼくは特別なことを知ってるわけじゃないよ。さっきはただ、ぼくが興味のある単語を並べて言ってみただけ」

 イウは表しようのない不安を胸に抱えながら、二人に微笑んで言ったが、セウ=ハルフはなんとも言わずにイウに微笑みを返しただけだった。


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