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「だから、これは作り話だっての」

 だがデミングがそれを不審に思う前に、勢いの良いセウ=ハルフが反論した。

「いや、セル=ハルフ。これはものすごい発見だ! 確かに『ラルレの空中庭園』は今のところ架空小説だということになっている。しかしこの本が何百年の時を経ても読み継がれてきたのは、架空ではないと提言した有能な学者が各時代に存在したからだ。架空ではないという証拠はないが、架空である証拠もない。それがこの本における最大の魅力のはずだ。きみだって充分わかってるだろう? 少なくともモートたちは絶対に興味を抱くはずだよ。むしろ彼らのことだから既に発見しているかもしれないが」

「確かにモートの奴らが喜びそうな発見ではあると思うが、俺にはよくわからん」

「モートの見解を聞いてみたい。『ラルレの空中庭園』に関してモートに聞いたことなかったけど、実はすごいことを知ってるのかも。ちょうど、五日後に来ることだし」

「モート種族が五日後に来るの?」

 まだ混乱したままの頭で、イウは興奮気味に聞いた。彼はアシディアについて、なにか知っていそうなモート種族に会ってみたかったのだ。五日ここに留まるというのは、かなり危険なことであると承知で――本当ならば明日にでも発ちたかったのだが、それはこのさい諦めることにした。

「ああ。モート学術研究団がオルギア遺跡を調査しに啓示の国から来るらしい。で、俺達が奴らを監視観察しながらオルギアまで案内するわけ。農民の親戚は仮の姿でそっちが本業なのよ」

 と、セウ=ハルフはどこか誇らしげに言った。

「ぼくも一緒に連れて行って! どうしてもオルギアに行きたいんだ」

 どの道、闇雲に一人でオルギアへ行ったとしても、たどり着ける保障はどこにもない。なにしろ真北に向かっているつもりでいて、西に進んでいたほどの方向感覚しか彼は持ち合わせていないのだ。せっかく案内役が目の前にいるのだから、多少の危険を冒しても頼った方が賢明であるだろう。


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