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モート種族は東端に住んでいる、足の長い漆黒の肌を持つ種族だが種族全体で三つの国しか持っておらず、その全ての国が他種族の国との国交を拒絶しているために、文化や思想はほとんど謎に包まれている。西の端に住むエクアフにとってモートはかなり縁遠い存在だった。
世界を征服できるだけの兵器を所持していると昔から言われているが、千年近く彼らが戦争を起こしたことはなかった。しかしごく稀に流出するモート製の武器や装飾品は、他種族が真似できない高度な技術が使われており、いかにモートが先進した文明を持っているかを如実に証明していた。

「そうだよ。彼らもオルギア遺跡に興味があるんだ。頻繁に訪れているよ。スミジリアンへの研究報告を条件に国内の通過を許可しているんだ。モートの見解によれば、オルギアは別次元に空間移動し、アシディアとオルギアの民はそこでまだ生きていると信じている。多分彼らは、エメザレの一件についても深く興味を持つだろうね」

別次元。
イースの世界があったことから推測するに――もしモートの見解が本当に正しいのなら、世界は複数存在することになる。イースの世界に行ったときのように、何か特定の条件を満たせばアシディアのいる世界に行けるかもしれない。
そして新造生物ゴルトバの勧告が的を射ていたなら、オルギア遺跡の中に手掛かりがあるはずだ。

「オルギアの遺跡に、アシディアに関する特別なものはない? 碑、像、あるいはそこに記述されている文面、もしくは部屋とか……なにか……」

「特別なもの……特別な……いや、遺跡全体が特別だからなんとも……」

「なら、新造生物は? 新造生物ゴルトバって知ってる?」

そこまでの情報を持っているならばゴルトバのことも知っているのではないかと、興奮を押し殺してイウは聞いた。

「新造生物……ゴルトバ……その単語は――」

「ラルレの空中庭園。その冒険小説の中に出てくる登場人物だ」

答えたのは長らく暇そうにしていたセウ=ハルフだった。


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