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「ぼくは研究し始めたばかりで、詳しくない。だから教えてほしいんだけど……女王アシディアに関することを」

「目の付け所がいいね! そう、女王アシディア。その存在こそオルギア最大の謎だ!」

そう言ってデミングはテーブルを勢いよく叩いた。ちらとセウ=ハルフを見るといかにも面倒くさそうな、嫌な顔をしながらつまみのパテをかじっている。

「オルギアの建国は第四期251年5月15日。今、第六期1580年だから……7329年前の出来事だ。そして滅亡したのは、というか突然消滅したのは第五期1982年8月3日。その間の約4700年、女王アシディアなる人物はオルギアを統治し続けてきたことになっている。つまり女王アシディアは不老不死だった」

「消滅? 滅亡ではなく?」

世界史について詳しくはないが、オルギアの歴史はかなり不鮮明で教わった内容も不詳の項目が多かったうえ、ほとんどの場合頭に伝説上と前置きがある。なぜそんなに確信を帯びて日付まで言えるのだろうか。彼は不思議に思った。

「そう、オルギアは何者かに滅ぼされたのではなく、ある日突然、建物を残したまま全国民が跡形もなく消えてなくなった」

「デミング」

セウ=ハルフが暇そうにしながら、半分なだめるように名を呼んだが、デミングには聞こえていないようだった。

「さらに我が種族エクアフの最盛期時代と揶揄される、デネレア大帝国時代の女王もアシディアという名でオルギアの女王と同一人物だ。デネレアは世界最初の日からあった国の一つだ。ゆえに彼女は世界の始まりから生きていたヴェーネン(人類)、すなわち伝説上不老不死といわれている旧ヴェーネン(旧人類)ということになる。旧ヴェーネンの存在は古代の歴史的文書にも多く記載されているんだ。第五期1982年にも十二人の旧ヴェーネンの存在が確認されていた。しかし旧ヴェーネンは第五期1982年の8月8日に全員死んだ。おそらくオルギアが消滅したことと関係がある、というのがモートの研究団がスミジリアンに報告してきた内容だ」

「モートだって?」

それはかなり意外な言葉だった。


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