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「それにしてもよく無事だったな。ここ一ヶ月、ダルテスがこの辺りを――と言ってもかなり広範囲だが、お前くらいの歳の少年を次々に襲撃してるんだ」

追憶を切り裂くように、馬を快適に走らせながらもセウ=ハルフは言った。

ダルテス種族はクウェージアから遠く東の地域に住んでいるはずだ。父から教えられた限りでは、ダルテスは野蛮で殺人と戦争を好み、横暴で頭足らず。筋肉と体躯こそ秀でて素晴らしいもののそれ以外に取り柄らしきものはない、とある。
しかしそれはおそらく白い髪の選民思想と他種族蔑視による、偏った表現であるだろう。
彼はダルテスの体躯が素晴らしく背が高いらしいことは信じていたが、全てのダルテスが殺人と戦争を好んでいるとは思っていなかった。

わりと近くのラルグイムという国にもダルテスは少数住んでいるそうだが、クウェージアは他種族の立ち入りを拒絶していたので、実際見たことはなかった。

「こんなところにダルテスが? なんのために?」

エクアフの国に無理してダルテスが来たところで楽しめそうな場所はない。スミジリアンも同じである。ましてこんな田舎に遥々やって来ても利益に適うものは得られないだろう。


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