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それから男は立ち上がり首からさげていた笛を吹いた。高い音が響き渡ると、しばらくして馬に乗った男が現れた。

「デミング! こっちだ!」

男は遠くに見える馬に乗った男に向かって手を振って言った。

「ダルテスか!」

やって来た、デミングと呼ばれた男は、辺りを見渡し警戒した様子で血相を抱えている。

「いや、標的にされそうなガキを拾ったんだ。危険だからカルテニまで届けてくる」
「拾った?」

デミングは馬に乗ったまま怪訝そうに聞き返し、イウをちらと見た。そしてイウの後ろに横たわる馬の死体を見つけ、ますます如何わしそうな表情をした。
二人のやり取りからして、男とデミングは同い年くらいなのだろうが、若い印象のする男に比べてデミングはたいぶ老け込んで見えた。おそらく目の下に広がる濃いクマのせいだろう。

「そ、道に迷ったんだそうだ。そういうわけだから今日は俺、帰るわ」
「おい! ただでさえ人手が足りないというのに! そのうえまだ早朝だぞ。早引けにしても早すぎる!」
「こいつが一晩明かせたってことは、ここいらにダルテスはいないんじゃないのか?」

男が言うとデミングは押し黙った。その隙を見て男はイウに馬に乗るよう目で促すと、自分も馬にまたがった。

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