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「ぼくはヴルドンに用はないんだ。どこでもいいからスミジリアン内の町に行きたかったんだけど……道が…わからなくて……」
「ああ、つまり道に迷ったのね」

男は気の抜けた声をだした。

「そのカルテニって村まで連れてってくれない?」
「そりゃもちろん連れてくよ。野垂れ死にされたら夢見が悪いし」

男は悪意のなさそうな顔で言って笑い、それからイウの後ろに目をやった。あまり振り向きたくはなかったが、イウも後ろの存在に目を向けた。
案の定、夜までは暖かかったはずの馬は冷たくなり息絶えていた。幸い、馬に苦しんだ様子はなく眠るようにして召されたらしい。少し不謹慎ではあるが数時間、馬の死体に寄り添って寝ていたのだと思うと小気味が悪くなった。

しかし、この馬がいなければ確実に彼はここまで来ることはできなかった。三度の夜は馬の温もりに助けられたし、孤独を紛らわせることもできたのだ。

「……馬、残念だったな」
「ごめんね」

すぐさま、小気味が悪いと思ったことを詫びるようにして、イウは冷たくなった馬を抱きしめ安らかな目元に口づけた。


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