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それから二十九年。エメザレはまだ戻らない。

私は随分と年老いた。剣を振りかざして闊歩した若いときは過ぎ去り、今はゆっくりと流れる穏やかな日々を送っている。

激動の時代は嘘のように唐突に終わりを告げ、クウェージアと呼ばれた国は滅んで無名の国と名を変えた。
私は時代のいたずらで王となり、苦悶の末に戦争なき国、安定した統治、理想的な国の基盤を作り上げた。
そして跡取りにも恵まれた幸福な私の人生の、たった一つの思い残りは、若き日の恋人であったエメザレの行方を未だに知れないということだ。

私はずっと彼を探し続けている。各地に探索部隊を送り二十数年。手がかりは未だに何もない。生きているのか死んでいるのか。それさえもわからない。

そしてエメザレとの再会を果たせぬままに、私は今、老いによる静かな死を迎えようとしている。


ついに死神がやってきたのか。私は観念して寝室に突如現れた白い髪の少年に笑いかけた。
月明かりに照らされた少年は、この世にはない幻のような神秘さと呪われた死者の如くの退廃を宿して私を圧倒するようにたたずんでいた。

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