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その思いで私はようやく棺の前にたどり着き、力尽きて半分崩れるように床に座り込んだ。

黒い石の棺は美しく反射して側面に私を映し出していた。
そこに映る私の老いた顔。その昔、壮麗と称えられた面影はもうない。疲れ果てやつれてやっと息をしている私の顔。

「布を…」

息絶え絶えに私が願うとアスヴァリンは丁寧に布を取り払った。

瞬間、懐かしい少年に返り、あの時の全てを跳ね除けて無邪気な顔で私は笑った。

「よく帰ってきたね」

エメザレは約束どおり、私のところへ帰ってきたのだ。
少年の私からは、もう何年も感じることのなかった荒ぶる感情が溢れ出た。
なぜならば、エメザレは私の人生を肯定するように棺の中で美しいまま微笑んでおり、それが恐ろしく幸福で私はただ嬉しくて、一生懸命に笑いかけていた。
なんと懐かしく、愛しい香りだろう。
私はエメザレの細い指に触れ、腐敗しない頬を撫で、冷たい胸に顔を埋めてしばらく泣き続けた。

「アスヴァリンよ。私の愛は不浄だろうか」

私の後ろに黙って立ち続ける彼にそう問うた。

「愛は不変に美しいものです。どのように破滅的であろうとも」

アスヴァリンの声は確信めいていた。
そして私は今までの自分をひどく恥ずかしく思った。
私はなぜ堂々としてエメザレの名を口にする事ができなかったのだろう
。なぜ今まで押し込めて隠してしまおうと思ったのだろう。
まるで恥ずかしいことのように、その事実から目をそらして生きてきた。
私はアスヴァリンの言葉に救われ、最後に私らしく幕を閉じる機会をもらって決意した。
私は言おう。せめて死ぬ前に。エメザレを愛していたのだと。

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