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「父上にお訊ねしたい事があります」

アスヴァリンが部屋を去ってすぐに、リバンは一人でやって来た。
嘆きと怒りの表情を隠しもせず、その口調は責め立てるようだった。

「なんだ」

私は聞いたが、彼が言わんとしていることは手に取るようにわかっていた。

私は若き日にエメザレと恋仲であったことを息子にもアスヴァリンにも言っていない。
だが、私のエメザレに対する異常な執着心や、周りにいるかつての私を知っている者達から放たれる噂話で、彼らはとうに気付いている。
このことで私はリバンと何度ともなく口論した。

「父上は、そのエメザレという男と、わたしの母オルビナ、どちらをより愛していたのですか」

私は答えなかった。答えなどないのだ。
エメザレとオルビナは全く別の次元の存在であり、二つの存在はどんな場合においても交差することも干渉することもない。
無論、比べることなど不可能であり、ゆえにその答えは存在しない。

だがしかし、おそらくその答えは己の可愛さから来る、ただの逃げであるだろう。
私自身が、明確に導きだされた無慈悲な答えを知りたくないのだ。



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