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一ヵ月後、黒い髪はやって来た。

「お呼びでございますか。陛下」

再び呼ばれた玉座の間では、すでに黒い髪の男の姿があった。王に向かってひざまずき、頭を下げている男の顔は見ることができないが、その体格は軍人にしては頼りない。

正面を見ればグセルガの隣には王子の姿もある。遠巻きでしか見たことがなかった王子の姿は近くで見れば見るほど弱々しい。
この時世にこれで次期国王とは哀れな。
例えグセルガがこの情勢を乗り切ったとしても、次の王がこのひ弱な少年であるならば、クウェージアは滅んだも同然だ。

「お前の監視と面倒は、そのジヴェーダがみる。わからないことは彼にききたまえ」

せせら笑いを浮かべながらグセルガは冷たく言った。

「はい。陛下」

男の声は落ち着いていた。この状況を恐れもしないとは、さすがに軍事教育所からやってきただけはある。

「では、さっそく床を拭く仕事に取り掛かるといい。ジヴェーダ、頼んだぞ」

その言葉にジヴェーダはしっかりとうなずいた。


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