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ある日のこと、ふいに彼は日記のことを思い出した。
あの時のまま片付けられていないゴミの山の中から古びた懐かしい日記を救い出す。


ぼくはもう勝てそうにない。
いいことをしても少しも救われないこの環境に。
正しいことすらできない。
もう、限界だ。
負けてしまう。
制圧する喜びに。
必要とされることに。
けれどもそれは間違っている。
人を傷つけて得られる賞賛も報酬もそんなものは卑しくて誇れない。
どうか負けないで。
ぼくよ、正しい存在であろうと生きている限り努力してくれ。
負けたくない。
この悪い気持ちに。
負けたくない。
どうか、負けたくないんだ。


日記の最後のページにそうあった。
とても静かに。静かに彼は胸の中で自分を哂った。そして日記を閉じるとまたゴミの山の中に放り投げた。

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