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「承知いたしました。最終的にはどういたしましょう」

「黒い髪は言うだろう。やはり私にこの場所は似合いませんでした。と」

そして、黒い髪は無能であったと。そう言うつもりだろう。これで無能なのが証明されたと。
一体そんな証明の仕方で誰が納得するというのだろうか。己の愚かさがより露呈するだけではないか。
とはいえ助言をする権限すらないのだから、黙って承諾するしかないのだが。

「その黒い髪の名はエメザレ、軍事教育所の出身者だ。お前も気に入るだろう。」

「そうですか。良いことです」

そうは言ったものの、軍事教育所の出身というところが気になった。
軍事教育所というのは黒い髪の孤児が入る施設だが、この国では孤児は国の持ち物である。黒い髪を目の敵にしている王の時世に、その教育所内の環境がいかに苛酷かは簡単に想像がつく。
そこで育ったエメザレとやらは相当の不条理に耐えられるだろう。

強敵だな。

ジヴェーダは嬉しく思った。

「ジヴェーダよ、わたしはお前を砂粒ほども信用していないが、期待はしている。裏切るな」

無表情な顔の奥に潜む、孤独と裏切りを恐れる、臆病で、それゆえにどこか必死に祈るような感情。それがなんとなく愛しくて、ジヴェーダはグセルガに温かい眼差しを向けた。

「惨めなわたしにとて、誇りはあります。ご心配なく」

 しかしグセルガは何も返さず、侮蔑的な眼差しでジヴェーダを見下していた。

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