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やはり部屋の掃除をひとに頼むんじゃなかった。

中途半端に片付いた部屋を眺めて彼はそう思った。
国王に与えられた部屋。それはたいそうに立派な部屋であった。白い壁、銀の装飾、アンティークのカーテン。
およそ下界では見られない豪華な家具は自身の給料で買ったものだ。
だがその美しい部屋はほこりまみれで、ゴミが溢れかえり、置き場所も考えずなんとなく買ったものが一度も使われずに辺りに散乱している。
仕方なしに、ジヴェーダはさっき自分で床に投げた日記を拾うと、一箇所に集められたゴミの山の中に放り投げた。

余計な事を。

ひどく苛立った。
その時、部屋の扉を叩く音がした。

「入れ」

彼が言うとまもなく扉が開き、さっきと違う今度は年老いたメイドが恐る恐る部屋に入ってきた。

「ジヴェーダ様。玉座の間で国王陛下がお呼びでございます」

「わかった」

なんの仕事だろうか。王が彼を呼ぶのは仕事の時だけであった。それ以外は話すこともなければ、パーティーに呼ばれたことも、食事に呼ばれたこともない。

年老いたメイドはさっさと出て行ったので、ジヴェーダはなんとなく鏡を見た。
灰色の髪の毛、灰色の瞳。白い髪が黒い髪を支配するこのクウェージアという国の中で、異端であり嫌悪されるこの灰色の種族。
だが鏡にはそんな男の背景に荘厳豪奢な白い部屋が映っている。
彼は自分にではなく、その背景にうっとりした。潤いのない乱れた髪をとかすこともなく、そのまま王の待つ部屋へと赴いた。

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