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とっさにエメザレはジヴェーダの手からすり抜け右へ逃げる。
が、その動きをはなから予想していたジヴェーダは足をかけた。罠に掛かってよろめくエメザレを力任せに蹴り飛ばすとエメザレは床に倒れた。
起き上がろうとするのを許さず、白い胸を足蹴にして見下しながら、腰に付けていた鞭を手に取り優越に浸った。

反抗的な目つきでエメザレはジヴェーダを睨んでいる。
傷一つない綺麗な身体に鞭を走らせるのだ、と考えただけで笑みがこぼれた。

早く恐怖に染まれ。
恐れおののき無様に泣き叫びながら、やめてくださいと懇願しろ。

思い切り、ジヴェーダは鞭を振り下ろした。

「――――ぐっ」」

皮膚を切り裂く鋭い音が響く。飛び散った鮮血がジヴェーダの白い服を汚した。
気に入って買った服。絹の、王族が着るような高価な服。汚れてしまったのが気に食わない。
けれどもそれ以上にエメザレの悲鳴が小さいことの方が気に食わない。
ばかにされているようで怒りを覚える。

「立て」

ジヴェーダはゆっくり起き上がるエメザレの髪を、頭皮から剥がさんばかりに引っ張ると無理やり立ち上がらせた。
痛みのあまりにうめきながらもジヴェーダの手から逃れようとエメザレはもがくが、ジヴェーダはありったけの力で髪を握り掴んだまま、勢いよくその頭をタンスに打ち付けた。
おそらく鼻を打ったのだろう、鈍い音がして鼻血と思われる血が何滴か床に落ちた。

「……は…ぁ」

エメザレの口からは痛みに耐えるうめきが漏れる。

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