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「ヴィゼルが来たぞ」

ドア越しにエスラールが言った。
静かにドアが開いて、懐かしいヴィゼルの顔が入ってきた。

「久しいな。エメザレ」

久しぶりに会ったヴィゼルはだいぶ、男らしくなっていた。背は高くないが、それでも威厳の漂う顔立ちだ。落ち着いた雰囲気は、エスラールよりだいぶ年上に感じられる。
上等なコートに身を包んだヴィゼルは、まるでどこかの貴族のようだ。

「ええ。本当にお久しぶり」

「思ったより、君が変わってなくてよかったよ」

ヴィゼルは穏やかな顔つきで笑ってみせた。

「その辺にある椅子に勝手に座ってくれ。お茶でも入れてくるから、適当にくつろいでな」

「ああ、ありがとう」

エスラールがそう言うと、ヴィゼルは上品に会釈をした。

「もっと、近くにおいでよ。そこじゃ遠くて私の声がよく聞こえないでしょう。この頃はあまり大きな声が出せないから」

彼はベッドから少し離れた位置にある、テーブルの椅子を持ち上げると、私のすぐそばに置いて座ってくれた。

「だいぶ調子はいいみたいだな。顔色もいいし、元気そうだ」

「ヴィゼルのお陰だよ。ありがとう」

「いいんだよ。お礼なんて。照れるからやめてくれ」

ほんの少し頬を赤く染めて、気恥ずかしそうに笑った。


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