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「この戦争は長くなる。お前を置いてはいけない」

「死にかけた私なんかのために、この国を見捨てないで」

「クウェージアは大切だ。でもそれ以上に、俺はお前が大切だ」

 彼のそんな言葉に私は首を横に振った。

「違う」

「違わない!」

「私のことはもう忘れてくれ、そして幸せな家庭を築け。君の幸せを潰して生きるのは嫌なんだ。私がいなければ、もっと違ういい道があった。私のせいで、君はどんどん不幸になる」

「エメザレがいれば俺は不幸なんかじゃないよ。どうしてそんな寂しいことを言うんだ」

「こんな顔とこんな体なんかじゃ、あっても何の役に立たない。何もできない。こんな私といて、何が幸せなの?」

せめて。せめて、顔だけでも元に戻ってくれたら。こんな醜い私を、エスラールは一体どんな気持ちで、いつも抱きしめているのだろう。

「俺が愛してるのは顔と体じゃない」

「違う。君はそれも含めて私を愛していたはずだ。顔と体という私を愛する二つの理由を失った今、君の愛は完全じゃない」

「昔はそんなことを言う奴じゃなかった」

エスラールのそんな言葉が胸に突き刺さって、私はやっと我に返った。
そして同時に悲しくなった。私は心の持ちようまで変わってしまったのだろうか。
だとしたら、彼は一体私の何を愛しているというのだろう。私が思うにそれはおそらく、過去の残像だろう。
彼は、かつて輝いていた私を愛しているのだ。今の私ではなく。

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