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どうやら私の思想は、私がいなくなった今もガルデン内で引き継がれているらしい。私の思惑とは全く正反対の方向に、ことが進んでいるのは否めないが、ここまで無力な私が今更なにを言っても仕方がない。

「戦争はいつ起きるの?」

ガルデンの革命軍はすでに、黒い髪の種族を結束させていた。国中の黒い髪はもはや革命軍の駒と化している。

「もうすぐだ」
「止められない?」
「無理だ」

 なだめるように彼は言った。

「そう」
「ごめん。何もできなくて」

彼は優しく私を抱きしめた。温かい体温がゆっくりと伝わってくる。それでも私には、彼をしっかりと抱きしめる力がない。
全てのものが不可能になり、全てのものが絶望になり、ささやかな幸せすら脅かされる。

「仕方ないよ。君のせいじゃない」

この国がこうなったのは誰のせいでもない。たくさんの思惑と思想が絡み合って、こうなってしまっただけだ。

「なら、戦争に行きなよ。君は民衆に必要とされてる。君がいなきゃだめなんだ。私のことはいいから、この国を変えて」

私は言った。せいいっぱいの希望だ。私の時代は既に終わりを告げた。新しい統率者が現れれば、民主はそれを英雄と呼ぶ。古い英雄は忘れ去られ、それが繰り返される。

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