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「エスラール、ザカンタはどうだった?」

「何も変わってないよ。あそこは。もちろん、この国も何も変わってなかった」

クウェージアという国は、不平等であり不条理の国だ。白い髪の種族は白い髪だからという理由だけで支配権を握り、黒い髪の種族は黒い髪だからという理由だけで支配される。

私たちは黒い髪の種族であり、また孤児でもあった。
クウェージアにおいて、孤児は国の所有物だ。私たちは、生きている限り戦い続けなければならない、終身の軍人にされた。私たちは国家の作った檻の中で、生涯を送らなくてはならなかった。
たが、私はそんな状況に不満などなかった。檻の中しか知らない私には、それが当然のように感じられたからだ。
親を知らない私だったたが、一つだけ親から譲り受けたものがある。
黒い髪は劣ってなどいないという思想だ。
誰から教わった訳でもないのに、その思いだけは揺るがなかった。何度、劣っていると教え込まれても、そんなはずはないと思った。確かに優れてはいないかもしれない。でも劣ってもいない。

だから、それを証明するために、いずれ起こるであろう、黒い髪と白い髪の戦争を阻止するために、少しでも小さな犠牲でこの国が救われるように、私はクウェージアの宮廷へと赴いたのだ。
どうなるかもわかっていた。私なんかの力で、クウェージアを変えることなどできないと。殺されてもいいと思っていた。
あれは、私の中で最後の賭けだったのだ。

そしてこの様だ。
世間は私を英雄に祭り上げておいて、こうなった途端に罵った。


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