14/14 「そうだよ。君はどうかしてた」 その瞬間だった。悲しみが唐突に消えた。心がきれいに整理され尽くして、感情がまるで静かになった。 どうして、あんなことで私は傷ついたのだろう。死のうとか、生きたいとか、そんなくだらないことで、悲しくなったりしたんだろう。 何はともあれ、引っ付いているエスラールを放すまいと、抱きしめ返してから、私は彼の耳元で囁いた。 「私と一緒に来るだろう? だって、私を愛しているんでしょう? 私とこの国を変えよう。皆を救おう。私たちは英雄になるんだ」 「お前は、誰だ」 抱きつく私を引き離して、彼はしつこく同じ質問をした。 「何度、言わせるの。私はエメザレ」 彼は何か言いかけたが、結局何も言わなかった。 「さぁ、ガルデンへ行こう。私たちの邪魔をするものは全て殺すんだ。君がヴィゼルにやったみたいに」 目に入ったヴィゼルの死体を見て、私は笑いながら言った。清々しい気持ち、冷たい小川のように、とても澄んだ気持ち。 「俺は愛してるよ。エメザレを」 「私も。愛してるよ。エスラールを」 くだらない戯言に縛られていては、幸福な人生を見出すことはできない。 私はもっと冷静に生きるべきだったのだ。エスラールに対する愛はけして忘れないだろう。そして、くだらない戯言から開放された今、私たちの未来はかつてないほどに光り輝くものとなった。 そして安心した。 私はやっと存在として死ぬことができたのだ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |